『んで?さっさと祓っちゃいなよ。』

冷たい瞳とは裏腹に、笑みが溢れる天照は塊を見ながら言う。

「…そうですね。他の人間に見つかっても面倒ですし。」

天照の提案に頷き、所謂巫女装束の懐から、少女は札を取り出す。

「降臨諸神、諸神人、殺鬼万千、却鬼延年、急々如律令。」

その札を口許に寄せて、なにやら呪文を唱える。

「…消えよ。」

最後に少女が、そう唱えた瞬間。

―…サァァァ…

黒く禍々しい気配を帯びていた塊は、跡形もなく消えた。

それと同時に札も消える。

『いやー。さすがだねー氷里。』

「お褒めに預かり光栄です。」

恐らくこれが“祓う”という行為なのだろう。

何事もなかったかのように少女は歩き出そうとした。

…だが。

「…あれー?おかしいですねぇ…」

その場に、どこか抜けた声が響く

「あなた、人間ですよねぇ?なのに妖の匂いがします」

チラリと振り向けば、見えたのは複数の男

皆、浅葱色の羽織を着ている