真っ黒な闇の中。

一人の少女が、暗い夜道を歩いていた。

「…いつまで、ついてくるんでしょうか」

『さぁ?妖の考えることなんてわからないよー』

凛とした声の後に聴こえたのは、まだ若い幼子の声。

「貴女だって妖に近い存在でしょう、天照様。」

『やだなー氷里ー。あんな妖なんかと一緒にしないでよー。』
ケラケラと軽い笑いが響く。

心底面白そうに笑うのは、宙に浮く幼子。

天照大神…正真正銘太陽の女神である。

「…しつこいですね…。」

『ねー。氷里にとり憑けるわけないのにさー…まったく、可哀想な子達だよ。』

やれやれだよ、と嘲るように笑い、天照はくるりと後ろを向いた。

つられて少女も後ろを向く。

―そこには、形などもとから存在しなかったのではないか?と思う程にグチャグチャになった“塊”があった。

しかもずるりずるりと少女を追いかけていたのだ。

『あーやだやだ。死んだんだから成仏すれば良いものを…。』

「この世に相当な未練と怨みがあったんでしょう。もはや邪気の塊ですね。」

天照は冷たい目をしながら。

少女はあくまで無表情で、妖と呼ばれた塊を見る。