「あ、おはよー西森さぁん♪」

 保健室でエネルギーを蓄え、教室に戻ろうと廊下を歩いていると、人懐こい声が私を呼んだ。


 反射的に、足に力がこもる。


「今日も綺麗な黒髪だね~☆」

 声の主が、私の頭に触れようと手を伸ばしてくる気配がする。

 次の瞬間、私の足は、鉄腕坊やもビックリするくらいの馬力で、廊下の床を蹴り出していた。


 ・・・と言っても、「逃走する」くらいにしか使われない、無駄なパワーなんだけど・・・。