椿さんと、芽吹ちゃんと、お姉さんと、永峯君と。

 賑やかなピクニックだろうな、と考えた時、私はやっと、その事に気がついた。


 ささやかな、純粋な疑問。


 私にとっては、何の考えもなしに口から零れるくらい、他意の無いこと。


「そういえば、お父さんは?」


 刹那。

 子どものようにはしゃいでいた永峯君から、プツリと笑顔が消えた。


 冷たい光を宿した眼に見据えられ、私は、口にしてはいけないタブーだったのだと悟る。


「あっ………」

『次は~、──ヶ浜~、──ヶ浜です。お出口、右側です』

 何か言わなければと思った時、無情にも、アナウンスが駅への到着を告げた。

「………行こ」

 立ち上がり、ゆるりと乗降口に向かう永峯君に、背中を向けられてしまった。

 何も言うことが出来ず、離れた後ろ姿を追いかけるだけで、私には精一杯だった。