「違うよ!」

 声を荒らげた永峯君は、申し訳なさそうな顔をしていた。

「……ごめん、そうだよね。俺の説明不足だった」

 眉を八の字にした彼が、私の眼鏡に手を伸ばして来る。

 スルスルとそれが抜けていく感覚にハッとして、思わずその手を掴んでいた。

「ダメ、ダメだって! 見えなくなっちゃうからっ」

 嫌がる私を、永峯君はキョトンとした顔で見つめる。

「俺、知ってるよ。この眼鏡、度が入ってないの」

 その言葉に、息を呑んだ。


 どうして知ってるの?

 保健医だって知らないのに・・・。


 愕然とする私に、彼はただ、ニコリと微笑みを返しただけだった。

「西森さん、いつも三つ編みに伊達眼鏡だから、せっかくのお出かけだしオシャレして欲しいなぁと思って」