店に駆け込んできた女の子は、
あの時の人だった。

少し髪が伸びたのか、
肩より上のショートボブに、
水色のダウンジャケットが似合っている。

やっぱり見た目は綺麗な子なのだ、と思った。

店内を見回した彼女は、
私を見つけると
驚いた様な顔したが、
すぐに慌てて近づいてきた。

「ごめんなさい。
遅れてしまって。
高岡亜矢子です。」

「あっ。いえ。大丈夫」

「すいません、
私も何か飲み物買ってきてもいいですか?
走ってきたら、のどが渇いちゃって。」

「えっ。はい。どうぞ。」


彼女はくるりと後ろを向くと、レジへ向かった。

ピークだった心臓の音が、少し弱まった。

水色のかたまりを見送りながら、
一瞬にして飛んだ、

(あれも聞こう。これも聞こう。)

と思っていたことを、急いで思い出していた。

(こんなことならメモしてくれば良かった。)

と思う。