モノクロ世界の俺


「………ごめん…なさい」
「いや、いいんだ。あいつが居るかもしれないという事をすっかり失念していた」
「……とこ…ろで」
「ん、なに?」
「……今日は…何をしに…来たの?」

ああそれは…と口を開きかけた俺だが、後ろから掛かってくる声で思い止まる。

「あの、葛西くん。この服とか私に似合いそうですか?…あれ、そちらの方は」
「………なるほど」
「そういう訳で俺は―」
「………デート?」
「そうそう、御霊を案内しにきた…って何を勘違いしてるの!」
「デ、デートですか!?私は葛西くんとがそんな関係なんか恐れ多いですよ」

そこ、変に畏まらなくていいから。
はい、姫宮も何故かニヤッとしない。
なんだその挑戦的な目は。
あれ、御霊なんか怒ってる?

「ところで葛西くん。この方はどなたなんですか」
「あ、言ってなかったっけ?姫宮…霙、同じ学年だよ。それなりに人気があるから学校に居ればすぐに噂は耳に入ると思う。
姫宮、こっちは御霊アリサ。俺はこういう表現は嫌いだけど…いわゆる噂の転校生ってやつだ」
「…え、姫宮!?…いやまさかそんな」
「………………………じーざす」

二人とも意外な反応だった。
互いの名前を聞いた後に一言を発して、それから押し黙ったのだ。
俺はその沈黙に耐え切れず口を開く。

「ど、どうしたんだ二人とも…。なんか険悪なムードだけど」
「…何でもありません。さ、葛西くんあっちに行きましょう?」
「え、いきなりなんで―ん?」
「………あなたは…もうすこし私と居るべき」

姫宮が俺の服の袖を掴んでいる。
しかしその力は意外に強く、俺は二人の間で引っ張られる。
なんというか…これは恥ずかしいぞ。
だがこの場合、俺はどちらに加勢すべきなんだろうか。

「おーい文…って何この面白そうな状況」

面白そうじゃない、さっさと助けてくれ。

「へいへい…
はいはい二人ともそこまでにしてー。
トリアーエズ落ち着こうよ、ね?
…ほら、この朴念仁も一応困ってるし」
「む、むぅ…仕方ないですね」
「………………無念」

やっと解放されたか、腕が痛い。
あと朴念仁ってなんだ、そんな言い掛かりを受けるようなことはしてない。