俺は小さく溜息を吐き、結城という女に近づいた。
「立てるか?」
彼女に手を差し出し、立ち上がらせようと声を掛ける。
「え……はぃ」
まだ動揺しているのか、顔を上げたその瞳はゆらゆらと揺れていた。
そして一瞬、店長の方を見たけれど彼の方は知らん顔してそっぽをを向いたままだ。
それを見た彼女は、何かを感じとったのか
小さく溜息を吐き俺の手に、そっと手を重ねる。
まだ小刻みに震える白い手を、そっと握り立ち上がらせ
乱れたシャツを隠すように、俺の上着を彼女に掛けてやった。
彼女は俺の上着をギュッと握り締め
俯いたまま「ありがとうございます」と小さな声を発する。

