っ、ウソだろ……。 こんな光景を見たのは、学生時代以来だと思う。 暗がりの中、ゆらりと佇む男の奥には 床に倒れこんでいる、女の子の姿。 女の子は、気を失っているのか微動だにしない。 しかもその女の子は、間違いなく波瑠の想い人。 サンゴちゃんだった。 最悪じゃないか。 なんでこんなことになってんの? 「サンゴちゃん、大丈夫か?!」 「分からない。夏生、海桜ちゃんを頼む」 波瑠は、目の前に佇む男から視線を外さずに 俺にサンゴちゃんの傍に行くように言う。