お母さんに泣き顔をみられたくなくて、 玄関のドアにもたれたまま、しゃがみこむ。 あまり多くない通行人の人達は、一瞬びっくりしてから、 何もなかったように通りすぎた。 「…な、んで…っまさ…とを、好き…になっ…ちゃったの……っ?」 好きになんかならなければ、こんな思いをせずにすんだのに。 「な、んで…っっ!」 声を押し殺し泣いていると、 ゆっくりと、でも確実に、 真っ暗な夜が辺りを包み込み始めていた。