資料室の前に立つと、ゆっくりドアに近づく。
すると厚いドアの向こうから、久しぶりに聞く例乃葉の声が聞こえた。
「私、真人のーーー、ーーーったの…」
それは、あまり内容がわからない程途切れ途切れだったが
誰かに告白をする時のような、
そんな口調だった。
それを聞くと私は、
ゆっくりとドアから離れ
資料室から遠く離れるように、歩き出した。
やっぱり、聞けない。
真人と例乃葉が付き合う瞬間なんて…
ズキズキと痛むこころに、
私は真人をまだ好きなんだと、改めて気づく。
「もう、嫌だよ…」
そう呟いて、その場にヘナヘナと座り込む。
そして顔を手で隠すようにして、声を押し殺しながら泣いていた。


