「秦ちゃん、初めて会った時のこと覚えてる?

あたし、あの頃は泣き虫だったけど少しは強くなったでしょ?」

「それはどうだろうなぁ。絹香、あの時は点滴怖くて大泣きしてたよな」

「そう。それで秦ちゃんが励ましてくれて。あれ、どこだったかな?」

「病院でしょ?俺らがガキの頃会うっていえば大概病室だっただろ?」

さっきまで客がまばらだった席は、いつの間にか学校帰りの学生達やカップルで埋め尽くされていた。

あたし達も傍から見たらそう映っているのかな… でも…

「秦ちゃん。あたしね、ずっと秦ちゃんが初恋の人だと思っていたの」

彼は驚いた顔をして何か言いたげな素振りをしたが、遮るようにあたしは話を続ける。

「確かに点滴は嫌だったけど、あの日会ったお兄ちゃんは『公園で友達ができなくて泣いているあたし』を励ましてくれたの」

「…っ!!」