……やっぱり、頭がおかしくなったとしか思えない。





世界史の授業中。

あたしの頭はやたら長い名前のローマ皇帝より、



…あの、ずっと前から知っている奴のことでいっぱいだ。






一誠、今まで一度もあたしのこと『高倉さん』なんて呼んだことないもん。



ちっちゃい頃は希咲ちゃんって呼んでたけど。





それに…




あの、よそよそしい話し方。


胡散臭い笑顔。





外面だけはいい一誠が、まるであまり親しくない人と話す時、みたいな。




まるで…他人と話す時みたいな。





……他人…







「高倉さん」



「…あ…神谷くん?」





気づいたら神谷くんがあたしの席の前に立っていて、世界史の授業はとっくに終わっていた。





…どんだけ一誠のこと考えてたの、あたし。