だけど真顔になったのはほんの一瞬のことで、一誠はすぐにニコッと、あたしに向けたことのないような爽やかな笑みを作ると、近づいてきた。




そしてやけに他人行儀な口調で言う。





「こんにちは高倉さん」




こっ



こんにちは!?
高倉さん!?!?





「えっ…はい?」




思わず聞き返したあたしに、一誠はいつものように暴言を吐くことなく





「こんにちは、高倉さん」





律儀に、もう一度そう繰り返した。





これは…



だれ!?!?






「えっと…い、一誠だよ…ね?」



「そうだけど?」





目の前で微笑む一誠は別人のようだけど、無駄に整った顔も、柔らかい色の茶髪も紛れもなく…一誠。





「あ、頭おかしくなったの!?」





だって一誠に『高倉さん』なんて呼ばれたことないよ!!