「これやる」
放課後の屋上で。
ズイッと一誠が綺麗にラッピングされた箱を差し出してきた。
「え、何これ」
「…誕生日プレゼント」
「え!?うそ!?一誠覚えててくれたんだ!?」
「当たり前だろバカ!」
耳まで真っ赤にしながら怒鳴る一誠。
怒鳴らなくてもいいじゃん…と思いながらも、あたしはついクスリと微笑んでしまう。
「笑ってねーで早く開けろよ!」
そんなあたしに一誠がまた怒鳴る。
「わ、分かってるよ今あけるよ!」
あたしは出来るだけ慎重に包装紙を破り、上品な白い箱をあけた。
…そこにあらわれたものに思わず、息をのむ。
…これ…
「つけてやる」
じっくり見る間もなく、乱暴にそれを奪い取った一誠があたしの後ろにまわった。
チャラン、とあたしの首元に光るもの。
…これ、もしかして中学の時、一誠とあたしで先生へのプレゼントを見にいった時の…
「…あの日からずっと思ってた。高校行ったらバイトして、希咲にそれプレゼントしてやろうって。
…そんで、その時に絶対言うって…」
すぐ後ろから聞こえてくる一誠の声。
「…まぁ、お前のせいで全然見当違いなところで暴露するハメになったけどな」
あたしははじめて一誠に好きと言われた、保健室でのことを思い出す。
「…な、何であたしのせいなの?」
「は?どう考えてもお前のせいだろ。
お前があまりに鈍感でバカでアホだからついイラッとして…」
「…そ、それはごめんって」
一誠にあたしが背を向ける形のまま話しているあたし達。
…なんか変なの。でも、恥ずかしくてとても向き直れな…
バンッ
その時突然、屋上のドアが開いた。
「おー、今日も空いてんな」
「ねー、貸切…」
あ、と入ってきたカップルの視線があたし達を見て止まる。
そして顔を見合わせると
「おっ、お邪魔しましたー!」
…風の速さで屋上を出ていった。