じっと俺を見つめたまま、黙っている矢野。




「…我ながら死ぬほど諦め悪いなって思うけど」




「…そこが湊くんのいいところでしょ?」




矢野が少しだけ口角をあげて、そしてクルリと背を向けた。




「あと、そういうことは直接希咲ちゃんに言ったら?」




「…だな」






…めちゃくちゃ周りの視線浴びてるの分かるし…。



こんな公共の場で一体何を叫んでるんだ、俺。





若いわね~、なんて声がすぐそこにいるオバサン集団から聞こえてくる…。





でもそうだ。俺はまだ若い。


だから何度砕けたっていい。つーかむしろもう砕けてる。




これでもっかい、砕けたら…その時はその時だ。






徐々に小さくなってく矢野の背中。





ありがとな、矢野…“そこがいいところ”って言ってくれて。




俺は最後までとことん、諦めの悪い俺でいく。