一誠に告る。
そう決めたのはいいものの…相変わらず臆病なあたしは、全然それを実行できずにいた。
蘭子ちゃんにも一誠、暫くあたしと話したくないって言ってたみたいだし…。
…って、そんなの言い訳だ。
気持ち伝えて、すっぱりフられるって決めたんじゃん。
彼女がいる人に告白するなんて最低だ。
でも、それでも諦められないから…伝えるだけ伝える、って決めたんじゃん。
早く言わなきゃ…いつまでもこのままじゃ、蘭子ちゃんにも…失礼だ。
「…というわけだが…聞いてるか高倉」
「痛っ」
バシッと頭を殴られ顔をあげると、担任の先生が呆れたような表情で見下ろしていた。
どうやら、その手に持っている出席簿で殴られたらしい。
「朝からボケッとするなよー。シャキッとしろシャキッとー」
「…はぁい。すみません」
「じゃ、そういうことで、やりたい者は近日中に名乗り出るように」
そして先生は最後にクラス全体を見回すと、怠そうに教室を出ていった。
…やりたい者?名乗り出る?一体何の話だろう。
それに心なしか、教室もいつもよりざわめいているような…。
「のんちゃん」
あたしはのんちゃんに聞いてみることにした。
「先生さっき何の話してたの?」
「んー?なんか、テレビがうちの学校来るらしいよ」
「え、テレビ?」
「そう。“高校へ行こう!”だって」
「えっマジで!?」
高校へ行こう!…あたしも知ってる。
5人組の超人気アイドルグループ、B5(ビーファイブ)が出てる番組だ。
毎週どこかの高校へ行ってロケを行うというもの。
結構面白くて、あたしもよく見てる…
「で、“高校生の主張”ってコーナーに出たい奴は名乗り出ろ、だってさ」
「そうなんだ~…」
高校生の主張、っていうのはその番組の中でも超人気コーナー。
内容は高校生が一人ずつ、全校生徒の前で思い思いの主張をするというもの。
主張は様々で、先生への文句だったり、誰かへの愛の告白だったり…
…告白?
「誰か立候補するのかね~?あたしだったら恥ずかしくて絶対ヤだけど。
…希咲、聞いてる?」
その時にはもう既に、のんちゃん声は届いていなかった。
「…それ、いつだって?」
「え?」
「収録の日いつか言ってた?」
「…え、確か来月の10日だったような」
…来月の、10日。
…その日は、奇しくも
あたしの誕生日だ。
…なんだかビビッときた。
これかもしれない。
ううん、逆に、こうでもしなきゃあたし…逃げる。
逃げたくない。
「あっ…希咲!?」
あたしは教室を飛び出した。