「“諦めない”か…」




暫くじっと足元を見つめたまま黙っていた矢野が、呟くようにそう言った。





「…ほんと二人は…似てるね」




「…え?」




「湊くんの気持ちは分かったよ」




顔をあげた矢野。その顔はなんだか物凄く、さっぱりしてるように見えた。





「なら私も諦めない」









「……え?」






カァ、というカラスの鳴き声がどこかで聞こえた気がする。






「や、矢野。今俺の気持ちは分かったって…」




「分かった。その上での結論」




えぇ!?



混乱する俺。




俺…実は物凄く、バカなのだろうか。矢野の言ってることが全く理解できない。






「あの、さ…」



「…湊くんだって、諦めないんでしょ。
だったらあたしだけ諦めるなんてズルい」




ず、ズルい…?





「…この勝負…負けないからね」




そしてフッ…と不敵な笑みを残すと





颯爽と屋上を出て行った…。







…えぇ!?



諦めない!?


ズルいって何が!?



勝負って、何の!?





…ズルズルとその場にへたり込んだ俺を、隣のカップルが心配してくれる。




「あの、大丈夫ですか…なんか顔色悪いですけど」




「…は…はは…大丈夫です…」





女って…わかんねー…。