やってきたのは中庭のベンチ。




蘭子ちゃんがベンチに腰をおろす…




だけど、あたしは座らなかった。





まず、何よりもはじめに言わなきゃいけないことがある…。





「…希咲ちゃん?」




蘭子ちゃんが立ったままのあたしを不思議そうに見た。





「…ごめん、蘭子ちゃん。まず始めに…あたしから話してもいいかな?」




「え?う、うん」





小さく、息を吸う。





「あたし蘭子ちゃんに言わなきゃいけないことがある。
あたし…もう、一誠とのことで…協力はできない」




「…え」




蘭子ちゃんが微かに目を見開いた。






「ずっと今まで一誠のこと、ただの幼なじみだと思ってたし…これからもずっと、そうなんだと思ってた。

でも、蘭子ちゃんと一誠がどんどん仲良くなってるの見て…なんだかすごく嫌だった。ずっと、このモヤモヤがなんなのか分かんなかったけど。

やっと気付いたの…あたしもう一誠とは、ただの幼なじみって関係でいられない」





本当にごめんなさい、と頭を下げる。




もしかしたら、ふざけんな、くらい言われるかもしれない。いや、あたしだったら確実に言う。



でも、もう偽りたくないから。



これがホントの気持ちだから。






…蘭子ちゃんは何も言わない。おそるおそる、頭をあげる。




すると




…なぜか少し、微笑んだ蘭子ちゃんがいた。



その口が、ゆっくりと開く。






「ごめんね」