「ちょっとって…何!?喧嘩!?」




「うーん…喧嘩っつーか…」




「あ、もしかして何か悪さして明美さんに引っ叩かれた?それで家にも入れないの?」





「ちげーし、子供か俺は」




一誠は呆れたようにそう言うと





「別に親に叩かれたわけじゃない。
家に入れないのは事実だけど、今日母さん出かけるの忘れてて、鍵持ってなかっただけだから」




「そ…そうなんだ」





じゃぁ、一体誰に殴られたの?微かに手形、見えるんですけど…。



でも一誠はそれを教える気は全くないらしい。





「と…とりあえず、うち入る?手当くらいするけど…」




…かなり、思い切った発言だったけど




「いや、いいわ」




呆気なく断られてしまった。





…ハハ、まぁそうだよね…。






「…だよね。ごめん」



「……」





気まずい時間が流れて、あたしは「じゃぁ」と逃げるようにうちに入った。









…素直になるって、難しい。



だってそれは自分をさらけだすこと。


本当の自分の気持ちを、伝えること。




もしそれが拒否されたらって思うと…どうしても怖い。足がすくむ。





…一誠は、こんな気持ちで。




あたしに想いを伝えてくれていたのかな。