「じゃぁ、そろそろ行くね!またね!」 たぶん、にこやかに笑ってそう言っているであろう、蘭子ちゃんの顔が見れない…。 ただ、あたしの横をすり抜けていく2人の上履きだけが、目の端にボンヤリ映ってて。 「…希咲ちゃん?大丈夫?」 「……ん?な、何が…?」 …声が。うまく出ない。 あたしの顔を覗き込んだ神谷くんが、微かに眉を寄せた。 「…すごい、今。泣きそうな顔してる」 泣きそう…あたしが?