固まるあたしに、一誠は少し唇を歪ませると、スッとあたしの上から退いた。
「…ごめん、怖がらせて」
そして掛け布団を持つと、部屋のドアノブに手をかける。
「…ど…どこ行くの?」
あたしの言葉に一誠は足を止めて…でも、振り返らない。
「…今日はリビングで寝かせてもらう」
「……わ、わかった……」
「……俺」
そして一誠はゆっくりと振り返ると、少しだけ笑った。
「俺、もう諦めるから」
その表情は、笑顔のはずなのに…
泣きそうに見えるのは、何で?
「だから…もう今までのこと全部…忘れて。今日は、それだけ言いたかった。
…おやすみ」
パタン、とドアが閉まって
一誠の姿が消える。