「………あ、そ」





感情のない声で一誠が呟くようにそう言って、あたしから離れていく。




それからは、あたしは少しも一誠の方なんて見ることが出来ずに
じっと足元を見つめていて。



一誠も席に座ったまま、一言も発さずに。





「おかえりなさーい!足元に気を付けておりて下さいね〜」





いつの間にか頂上を回って、地上に戻ってきていたらしい観覧車。



お姉さんが明るい声で扉をあけて、



一誠はサッサと先におりていってしまった。





「…大丈夫ですか?」





動かないあたしに、お姉さんが戸惑ったように声をかけて




「…はい、すみません」





できたらこのまま、もう一周して

どこかに消えてしまいたかった。