ざわ、と、風が吹いたような。 「…あ、そうなんだ……」 「うん。でも湊くんって絶対高倉さんのこと好きじゃん?」 「えっ!?」 あたしの頬を冷や汗がつたう。 「あれ、もしかして気づいてないの?高倉さん。 あんなの、誰が見ても丸分かりだよー」 「え…そうなの…!?」 「そうだよー」 クスッと笑う矢野さんの笑顔からは僻みも嫉みも、何も感じられない。 あぁ多分、本当にいいこだ。この子。