「いや…ないないないない!
ありえないって…そんなまさか」




「希咲ちゃん!」





ブツブツ呟きながら早足で教室に入ると、神谷くんが駆け寄ってきた。





「大丈夫だった?さっき。なかなか戻ってこないから、心配したよ」




「………え」





…そうだった



あたし、神谷くんと数学のノート運んでて。



で、突然アイツに拉致られて…




ノートはその場に放置…






「ごっごめん神谷くん!
あたし、全部神谷くんにやらせちゃって…」




衝撃的な出来事がありすぎて、すっかりさっぱり、忘れてた。





「いや、それは全然いいんだけど。

…なんかあった?湊くんと」




「…え…」





思わず言葉に詰まる。



何もないと言ったら…嘘になる。



ていうか、むしろ有りすぎて、何がなんだか…





「……ごめん神谷くん。
あたしちょっと目眩が」



「えっ!?大丈夫!?」




「うん…保健室行ってくるね。先生に言っといてくれる?じゃ」




「あ…希咲ちゃん?」






フラフラ、する。



なんだか頭も痛いような。



なんだか…ところどころ、節々も痛いような。




なんだか、寒気もするような。










「38.2℃…そりゃ頭も痛いし、寒気もするわ」





体温計を見て、ため息をつく保健室の先生。





「大人しく寝てなさい。
早退手続きしとくから」



「はい…」







どうやら熱を出したらしい。