…ゆっくり離れた唇に、ちょっと頬を赤くした一誠がバツの悪そうにあたしを見る。




でも、どこか吹っ切れたような、そんな表情にも見える。





あたしはといえば






「………あ…の、」






なにがなんだか分からず、呆然としている。




頭の中ではゴリラとチンパンジーがメリーゴーランドに乗りながらバナナを貪り食っている。




つまりはそれくらい混乱しているということを、わかって欲しい。






「…もう俺、ストレートにいくわ」





ゴリラ…じゃなかった、チンパンジー…でもなかった。一誠が、ゆっくり口を開く。





「おまえバカだから、変に回りくどいことしても全く伝わんねーし。あげくそのバカを狙うバカにも気づいてねーし、ほんっとバカ」



「は…はい??」






バカを連発されすぎて、何を言われているのか全く理解できないあたしはバカなのだろうか。





「とにかく!」





そして一誠が、突然大声を出した。






「こーゆー…意味だから。

幼なじみやめるって…こういう意味だかんな。



覚悟しろよ、バカ!」






そして最後にあたしの頬をギュッとつまみ、空き教室を出ていった。





パシンッとドアが閉まる音がどこか遠くから聞こえるような。



でもさっき遠慮なく抓られた頬がめちゃくちゃ痛いから、たぶんコレは、夢ではない。






「………えぇ?」







情けない声が、誰もいない教室に溶けて消えた。