頭に残るのは今まで向けられたことのない、胡散臭い笑顔。 耳に残るのは16年間、今まで呼ばれたことのない、呼び名。 “高倉さん” 「希咲ちゃん」 「…えっ!?」 思わずグルンッと隣に首を向けると、神谷くんが少し恥ずかしそうにチラ、とあたしを見た。 「…って呼んでいいかな?今度から」 「え……あ…、う、うん」 “希咲ちゃん” …なんだか、ひどく懐かしい響きだ。 そしてそれが、今まで全く思い出すことのなかった記憶をつれてくる。 “…希咲ちゃん 大きくなったら……”