「どうだった?」
帰りのエレベーターでハッシュに聞かれた。

「どうもなにも・・」

エレベーターの窓が、フロアの通過の度に明るくなる。
その眩しさの中にあの3人を思い出していた。
「・・彼らは妄霊なの?」
ハッシュに聞く。
妄霊が作り出す圏こそ無かったが・・なぜか『園田さん一家』と似た雰囲気がある事に入った時から感じていたのだ。
小学生らしくないと言うか・・大人が描いた小学生を見させられているような、そんな気持ちになるのだ。

「よく分かったね。ただ、彼ら3人は混沌そのもの」
「混沌?」
「そう。このマンションの、ある家庭にカズキ君と言う男の子がいたんだ。」

ハッシュ曰く。
このマンションにカズキ君と言う男の子がいたらしい。
カズキ君は野球クラブに入り、妹がいた。
しかし、何かの拍子で家庭が壊れ。
カズキ君は父方とも母方とも、どっち付かずで過ごしていた。

「・・その時、カズキ君は思ったと推測される。『父方に体を、母方に心を渡そう』と。」
「そんな・・」

「実際にそんな事は出来ないのは当たり前だ。でも、カズキ君は思いの塊を妄霊として吐き出してみせたんだ。」
「それが・・まさか、カズイ!?」
「そう。あれがカズキ君の分身だ。きっと本体は何事もなく大人になっていると思うのだが・・」