海の花は雪・2

深谷君が必死に立ち泳ぎをしているのに気づいて、オレは自分の腕につかまるよう促した。

次第に自分も浮力で足が床に着かなくなり、面倒だったので深谷君を抱きかかえる事にした。

天井に頭が着くほど水位が上がって来ると、深谷君が落ち着いた口調で呪文を唱え始めた。

「″ハスミ・クライス・イルギス・スイミ″…」

因縁の呪文が深谷君の口から唱えられると、深谷君の緊張が体から伝わって来るのが分かった。

ゴボッ…という音の後に、部屋が海水で満たされる瞬間、心臓がドクンと鳴った。

ワクワクする気持ちで、いっぱいになる…

海水の中でゆっくりと息を吐き出すと、深谷君と目が合った。

「やったね!大成功♪」

「うん…」

良かった…と声にならない安堵が伝わり、深谷君の体から緊張が消えていく…

「…ありがとう、もう大丈夫だから…」

ちょっと照れながら、深谷君がうつむいた。

「あ、ごめんごめん」

自分の方こそ緊張していたらしく、手から力を抜くと深谷君が離れて行った。