「さぁ、香山くんも帰りなさい。下校時間過ぎてるわよ?」



気づけば先生の顔には色が戻り、時の流れもいつも通りだった。



さて、俺も帰るか。



「はい。わかりました。じゃあ。あぁ、それと…」



「…?」



俺の次の言葉を待って、その人懐っこそうなくりくりした瞳をこちらに向け



て、首を傾げる先生。



その顔を見てクスリと笑みが漏れる。



その瞳をすっと見据えて。



「先生は、間違ってませんよ」



告げた瞬間、バラバラと落ちる透明な水滴。



こんなに澄んでいるんだから、きっとこの人は大丈夫だろう。



「じゃあ、帰りますね」



「うん。さようなら」



「さようなら」