どうして。



私と貴方との接点なんてありませんよね。



会話をした覚えもないし、名乗ったことすらない。



それがなにがどうして『やっぱり』に行き着くというのだ。



一人、悶々と疑念と格闘していると、カタリ、と静かな音がなり、彼がこち



らに向かって来た。



歩くリズムに合わせて踊る、柔らかそうなそのミルクブラウンの髪に、いつ



も手入れをしているんだろうな、なんて、場違いなことを思った。



「でさ」



「きゃあっ!」



いきなり上から降り注いで来た声に声を上げてしまった。



髪のことを考えていたせいで、彼が目の前に来たことに気づかなかった。



声を上げた私に向かって、くつりと喉を鳴らした彼は「そんなに驚かなくて



も。ていうかぼーっとしてたでしょ」なんて言いながらそれはそれは優美



な笑顔を作っていた。