―ドク、ドク、ドク、ドク。



遠くから、チャイムの鳴る音が聞こえた気がするけれど、耳元で聞こえる、



一定のリズムがそれを邪魔する。



振り向いた彼は未だに意味深な笑みを湛えたまま。



沈黙に耐えられなくて、なにか言葉を発しようとするけれど、浮かぶ言葉は



どれもこの場にそぐわなくて。



口をパクパクしていたら、彼は危うい笑みから、見かねたように眉を下げ



た。



「君さ、香山凛(こうやまりん)ちゃんだよね?」



「ぇ?」



唐突に尋ねられて、停止していた思考が一気に活動を開始する。