空はもうすっかり赤く燃え、私たちを囲む世界は物悲しげな表情をしてい



た。



少しずつ、季節が移ろっていく。



舞っていた桜吹雪は青葉に代わり、最近はそれも青青と茂っている。



今はその葉すら夕焼けに照らされて暖色に染まっているけれど。



視界の端にそれらを納めながら慣れない道を歩く。



隣にいる先輩を、伸びる黒の分身が嫌というほど強調している。



いつもなら車で通るこの道も歩いてみるとまるで違う風景が映る。



赤く燃えるこの陽にも、姿を変えていく植物にも。



今までは小さな変化を取り零していたのかな。



あまりにも足早に駆け抜けていく現実に置いていかれないように、きっと目



の前にあるものしか見ていなかったのかもしれない。