詐欺師の恋

住所を告げて動き出したタクシーに揺られつつ、隣でくったりしている中堀さんを見た。




―苦しそう。



触ってもいいかな。




手を上げたり下げたり逡巡した結果、そっと中堀さんの髪をよけた。



薄らと汗を掻いている額に手を当ててみると、かなり熱い。



ふと、伏せられた睫毛や、唇に目が行ってしまう。




び、病人だってば。



私は急いで自分に言い聞かせて、視線を明後日の方向に向けた。



そうは言ったって、中堀さんの弱い所なんて滅多に見れないから、すごく貴重な気がして。



今しか出来ないことがあるんじゃないかと脳は勝手に働いてくれる。




―駄目だってば!




邪念を払って中堀さんからパッと手を離し、外の景色に集中しようと窓側を向いたその時。




コツン。




熱と重みが私の肩に落ちてきた。




中堀さんが、寄っかかってる。




カチカチになって固まる私。




「大分具合が悪そうですねぇ」




タクシーの運転手さんが話しかけてくれるけれど。




声を立てて起こすのが可哀想で。





とても小さな声で、「そうですね。」と返すのが精一杯だった。