詐欺師の恋

暗くて、実際の所、全てを把握することはできないんだけど。


それでもやっぱり。


中堀さんはこの仕事が好きなんだなぁと感じた。





―気付かないかな。




中堀さんがこっちを向かないかな、という願望がむくむくと湧いてきた。



必死で機材やら何やらをいじっているのに、まぁ、見るわけないんだけど。




黒のパーカー、羨ましいぜちくしょう。



いっそのこと、あの黒いパーカーに生まれてきていれば、中堀さんと密着できたのにという変な思考回路が浮かぶ。



照明のせいで、本当に黒かは定かじゃないけれど、袖は軽く捲られている。






なんでだろう。




抱き締めてあげたくなるような。




そんな風な想いに駆られた。




いつもは、抱き締めて欲しいと思うのに。







自分の中に突如として芽生えた感情に首を傾げていると、急に照明がひゅっと暗くなって、直ぐに元に戻った。




音楽は変わらず流れているので、特に客達は騒めいては居ない。