詐欺師の恋

「あれ、君スタッフ…」




グレイの髪をツンツンと立てている彫りの深い顔のお兄さんは、私の首からぶら提げているパスケースをじぃっと見つめる。




「えっと、メリッサさんの…」




そこまで言えば、理解できたようで、お兄さんはあぁ、という顔をした。





「もしかして、花音ちゃん?」





「あ、はい。」





警戒している顔をぱっと解いて、お兄さんは直ぐに笑った。




「そうか、君が。どうぞ、中に入って。今ちょうど零の出番だよ。もういっぱいで、見えないかもしれないけど」





「ありがとうございます…」




私も小さくお辞儀して、お兄さんの指す方へ向かう。




なんか。



中堀さんて、やっぱりすごい人なんだな。



高級感漂うこのクラブで、直ぐに売れっ子として働ける。





「ひえー…」





中は大勢の人でごった返していて、ステージに近づくことなんて不可能に近かった。




途中掻き分けて行ってみようかと試みたが、直ぐに押し戻されて、元の位置に戻ってきてしまう。