詐欺師の恋












「―中堀…?」










まさか、その後ろ姿を見送りながら。





誰かが、何かを思い出すように呟いたことなど、知る由もなく。







家に帰ったら速攻で、今度こそお泊りセットを鞄に詰めて電車に飛び乗ろうとわくわくして。




ちらちらと降る粉雪に、想いを弾ませて。





これから会える中堀さんに、どんな顔して会おうかなんて考えていた。






外の寒さも気にならないほど、私は有頂天になっていて、憲子と馬鹿な話で盛り上がりながら、駅に向かって歩く。





空は雲って真っ暗なのに。



人工の光に照らされた白い雪のせいで、明るく見えた。