詐欺師の恋

暫く無言だったが、やがて、中堀さんが、ふーと息を吐いたのがわかった。




《…わかった。じゃ、代わりに誰か迎えに行ってくれるよう頼んどく。》





「それは、悪いです!ちゃんとひとりで行けます!」




《ばーか》




「なっ!?」



《言われたとおりにしないなら許さないから。電車乗ったらメールして。》




それだけ言うと、いつものように中堀さんはあっさりと通話を切った。



けれど、私はいつもとは違う感情と共に携帯を見つめる。





―お、折れた。



中堀さんが折れた!




会社の入り口で、今にも踊りだしそうな私。




しかも、お誘い!!


中堀さんからのお誘い!!!




「…幸せそうねぇ、花音。」




携帯を握り締めて、小さくガッツポーズを決めた所に、憲子が登場。




「あんたから花が飛んでるわよ。」




憲子はそう言ってから、小さく珍しいと付け足した。




「中堀さん?」



「うん!会えるの!これから!」



「これからぁ?!」



やかましく騒ぎ立てながら、私達二人は会社を出た。