詐欺師の恋


「それは間違いだから。そこから解放されて、俺は良かったって思うけど。でもだからこそ、空生は何もなくなった。あいつにとって、そこからのスタートは、ゼロじゃない。マイナスからだ。」




空っぽの自分からのね。とタカが付け足す。





「自分自身が何者なのか知らないのは、俺等が思っている以上に恐いことなんだと思う。」






いつのまにか、ぎゅっと缶を握り締めていた掌が汗ばんでいることに気付く。



身体は凍えるように、寒いのに。





「…私に、何が出来るでしょうか…」





皆目見当がつかない。




落ち込み始めてきて、私は項垂れる。





「カノンちゃんが、そんな空生でも良いんなら…やっぱり覚悟が必要だってこと、わかってくれてれば、良いと思う。」





「それは、勿論ですけど…、でもなんか、こう、前はべたべたって感じだったのに、スキンシップが少なくなった気が…」





ここ最近の私の悩みを打ち明けると、タカはぶっと噴出した。





「あ、ちょっと!ここ、笑うとこじゃないですけど!真剣なんですけど!」




「…ごめ…ははっ…そろそろ、行こうか。家まで送るよ。」





笑いを逃すように立ち上がるタカに私は目を剥く。




「ちょ、ちょっと!笑っておいて、私の悩みどうする気ですかっ!」