詐欺師の恋




「やめた方がいいぞ…」



崇は心配そうに呟き、頭を抱えた。



「ねぇ、お願い。私、貴方のこと気に入っちゃった。」



女は胸元の大きく開いたカットソーを意識しながら、覗き込むような仕草で空生に話しかける。



空生はそんな彼女に構う事無く、燈真から差し出されたグラスを受け取った。



「名前だけでもいいから、教えて?そしたら私―」



バシャ。



一瞬の出来事だった。



崇の周りに居た女達から悲鳴が上がる。



「酒が不味くなった。帰る。」



空になったグラスをカン、とカウンターに置くと、指に付いた塩を空生は舐めた。


髪から酒を滴らせている女は、瞬きを繰り返し、自分の身に起きた出来事を飲み込めないで居る。



「ちょ、待てよ」



燈真の制止も聞かずに、空生はさっさと来た道を戻って行った。



「何なの!?アレ!」



漸く放心状態だった女達が口々に憤りを露わにするが。



それを余所に、崇は渋い顔で1人、グラスに口を付ける。



「だから言ったのに。アイツは駄目だって。」