「夢じゃないから。」






そう言ったと思うと、私の手を取って、立ち上がらせ。




「!」




刹那、軽く、触れるだけのキスが落ちてきた。









「絶対、バレてる。花音、走って。」







中堀さんは、そう言うと、さっきまで庭を見ていた窓を開ける。





「え?!え?!」





状況が飲み込めないでおろおろする私を、先に外に出た彼が強く引っ張った。










「時間ずらしたから、今頃本人が来る頃だろ。」







「えぇ!!!!?!?!」







走る、走る。





ほとんどひきずられているんじゃないかって位。






甘い余韻、ゼロ。








―この詐欺師め。








息切れしながら、私は掴まれた手の先に居る中堀さんの横顔を見た。














いつの間にか。





俄か雨は止んで。





あらゆるものを綺麗に流し去って。





空気に新しい青を、映し出す。





そんな青を、私達は疾走する。















運命、なんて。




絶対、なんて。




有り得ないから。







きっと、私達の道はこれからも、平坦じゃない。







それでも。






貴方の歩幅と、私の歩幅が。




揃っていたら、それで、いい。









愛しくて、不器用な、私の詐欺師。








もう、嘘を吐かない、何色にも染まらない、青い、空。









                   ―fin