「すいません、遅くなりました。」
一も、
二もなく。
上から降ってきたその声が好きだなと思った。
心臓が、止まるかと、思った。
―まさか
「いえ、ぴったりですよ。遠い所、お疲れ様でした。櫻田と申します。今日はよろしくお願い致します。」
身体が硬直して、手先が震えた。
「雨が降ってきたようですが、道は混みませんでしたか?」
どうして?
なんで?
空耳?
耳に馴染む声に、自分の感覚を疑う。
「ああ…まだ降り始めですし、大丈夫です。途中、事故渋滞に巻き込まれてしまいましたけど、問題ない位でしたので。」
それでも、間違いなく、この声は。
「ほら、花音さん、ちゃんと顔を見て―」
「………っ」
錦さんに促され、やっとのこと振り返って、入ってきた相手を見た。


