「…先方はまだいらっしゃっていないのですが―」
着物美人が部屋を後にすると、腰を落ち着けた私に、錦さんが話し出す。
「どういう方か、ご存知ですよね?写真は見られましたか?」
祖母が気に入った結婚相手の詳細情報は、送られてきたまま、封筒に入ったまま。
だって。
見るわけない。
私は渋い顔をして、無言で窓際に目を逸らした。
「―やはり、そうでしたか…、実は会長も、ご両親もそうじゃないかって心配してらっしゃって」
錦さんは、特に驚く風でもなく、自分の鞄からファイルのようなものを取り出した。
「念のため、ここに準備させていただいたのですが…。名前は、舟木馨(ふなきかおる)さんと言います。学歴も、職業も申し分ない方ですよ。現在は病院を経営してらっしゃいますし。」
パラパラと紙を捲るような音が、する。
でも、私の目線は、錦さんの向こう。
窓の、外。
「写真も一応、準備してきました。ご覧になりますか?折角ですし…」
「…いいです。。」
ぽつり、ぽつりと。
「えぇ?…まぁ、これから直ぐお会いになりますし、、あれですけど…。外見も穏やかそうな、素敵な方ですよ。眼鏡越しの優しそうな目とか…ですね…」
雨が、外を濡らして。
濃い、緑が。
さらに濃くなる。
さっきはあんなに天気が良かったのに。


