「あの、、実はですね…、会長が今日ここにお出でになる予定だったのですが、急に体調を崩され、同席できないことになってしまいまして―」
「あ…そうなんですか…」
祖母とは大分疎遠だから、実は久しぶりに会うのが億劫でもあった。
それだけでも気を遣うのに、その上お見合いなんて。
心臓が幾つあっても足りない。
だから、恐縮しきっている錦さんには悪いけれど、ちょっと、いや、かなり、ほっとした。
「私で役不足だとは思いますけれど、精一杯代理として仲人役を務めさせて頂きます。」
なんて良い人なの、錦さん。
…でもまぁ…つまりは、監視人て所かなぁ。祖母の代わりにきちんと見届けるよう言われてきたのだろう。
複雑な思いを抱え、錦さんに連れられて門をくぐると、着物姿の美人なお姉さんが丁寧に出迎えてくれる。
―服のチョイス、間違ったかな…。着物着てくれば良かったのかな。
案内の下、部屋まで続く長い廊下を歩き、反省。
だってまさか、こんな所だとか、思ってなかったし。
「こちらでございます。」
洗練された所作で、障子を開けるお姉さんに続いて中に入ると、さっき予想していた通りの、期待を全く裏切らない、気品溢れる和室が広がっている。
窓から見える風景は、みずみずしい青が映えて美しく、自分がここにきた目的を一瞬忘れるほどだった。


