詐欺師の恋



「…行かなきゃ…」





ぽそ、と呟いて。





私は燈真とは反対の方向へと歩き出す。





途中、袖とか、スカートとか、確認しながら。




「良かった…そんな汚れてない。」




ほっと、安堵の溜め息を吐いた。



それなり、きれい目コーデ。



これからお見合いに行くのに、汚していくわけにはいかない。



皺になったとことか、ちょっとずれた首元とかを直し、それから前を見た。






―私も、前に進まなくちゃ。




一歩を、踏み出さなくちゃ。




燈真のことを信頼できるかどうかはわからないけど。



中堀さんについて、自分の中での区切りはついた。




もう、いいよね。



まだ、駄目でも。




中堀さんに対して、自分にもうできることはない。






空は、青い。




空気は、暖かい。




何かを、終わりにして、何かを、始めるには、うってつけの季節かもしれない。






腕時計の時刻を確認し。




「がんばれ、私。」




頬をパンパン、と叩いて気合を入れた。