詐欺師の恋

ほんの一瞬。


見間違いかと思うほど、少しだけ。


燈真の瞳が、彷徨った。



と。



突然、添えていた手を振り払われ、身体が楽になって、空気が流れ込んだ。





「あー!うざい…。空生も頭がおかしくなるわけだわ。俺、もう本気であんたの顔見たくない。馬鹿になる。」





前髪をくしゃくしゃとかきあげて、燈真が苦いものを口にした時のような口調で私から一歩下がる。




「…あの…」



「どっか行って。」




これ以上、聞きたくない。


話したくない。



燈真の全身から、そんな空気が漂っていた。




「…心配しなくても、あんな使い物にならない男はこっちから願い下げだっつーの。」




ぐっと押し黙って俯いていると、燈真のそんな台詞が降ってきて。





「!」




信じられず顔を上げた時には、既に燈真は私に背を向けていた。





「あっ、ありがとうございますっっ!!!」




私はその背に向かって大きく叫び。




いつか、燈真の傍に。



光の暖かさを知っている人が。


傷の舐め合いではなくて、ちゃんとした愛情の暖かさを知っている人が。



寄り添ってくれる時が、来れば良いのにと。




願わずにはいられなかった。