詐欺師の恋

―早く、帰ろう。




そう、思いながら、足を速めた瞬間だった。






「空生っっ!!!!」







俺の名前を呼ぶ、声に。




全身が、固まった。





俺の思考が、止まる。





なんで。




という文字だけが、頭を支配する。





どうして、わかるんだろう。






「お花っ!!ありがとう!!!!!あのっ、、、、」





後ろ姿、だけで。





「あのっ、私、やっぱりっ!!」





あれだけ間近で俺を見た看護師だって、見破れないのに。



毎日見てたって、気付かないのに。





人違いかも、しれないのに。





なんで、そんな確信を籠めて。







「どうしようもなく貴方が好きですっ!!!」






俺だって、わかるんだろう。






「貴方がこないだ私に言ったことは、信じませんから!!!!」





今まで誰も。





「私は【空生】が言った事を信じてますっ!!!」





『俺』を見つけてくれる人なんか、居なかったのに。





「私、期待していいですかっ!?貴方がまだ、私のことを好きになる可能性があるって、思ってていいですかっ!?」





そんな真っ直ぐに。







「待ってても、良いですか?!」






俺なんかを見ないで。


胸が焼け焦げてしまいそうに、苦しくなるから。