―花を届けるようになって、7日目。
「あら。こんにちは。櫻田さんに?はいはい、ちゃんと届けますね。」
最初の頃は、名前を聞き出そうとしたり、会ったらいいのにとしきりに勧めてみたりして、お節介を焼いた看護師達も、俺の顔に馴染んできたらしい。
御礼を伝え、回れ右をすると、俺は裏口に向かった。
時間帯をばらばらにしているのも、間違っても花音と鉢合せにならない為だ。
同じ時間だと、送り主に疑問を感じた花音に待ち伏せされる可能性も、なくはない。
外に出ると、陽が傾き始めていた。
嫌だな、と思う。
その下を歩くのが、苦痛だ。
光があるから、人はモノを見ることができる。
光があるから、色が変わる。
そんな陽の光は、俺にとって、眩しい。
あの人も、花音も。
俺には眩し過ぎて、並んだら消えてしまいそうだ。
自分が見てきたものが、本当の色じゃないと知るのが、怖い。
もしくは。
黒で塗りつぶしてしまいそうで、怖い。


