詐欺師の恋

そのまま、燈真から手を放すが、燈真は動かない。





「―俺はもう二度と、ここには戻らない。」





俺は立ち上がって、親指で頬の血を拭い、契約終了を告げる。




それは、燈真に二度と会わないということと、ルナへの別れを意味していたから。





暫く誰も何も言わず。




俺は、悄然として俯く燈真に、ゆっくりと背を向けた。





「―あの女んトコにいくわけ?」





ふいに、じっと床を見つめていた筈の燈真が、忌々しげに声を掛ける。





「……いや。」





俺は振り返らないまま、首を振った。



歩き出せば、パキン、とガラスの砕ける音が、いやに大きく響いた。






そのままの俺でいいと。



花音は言ってくれたけど。





俺はやっぱり。




臆病過ぎて。





あんたに笑ってて欲しい、と願いはしても。




幸せに、なんて、できそうにないから。





そんな自信、ないから。




近づけば。




今回みたいに、傷つけてしまうのが、怖いから。





今更、出て行って、どうにかしようなんて、思わない。