「なんでそんな簡単なこと、忘れちゃったのかな?お前の居場所は、ここ以外にないんだよ。俺はお前にそれだけのことをしてやったよ。あの女は?お前に何してくれたっていうの?」
見せかけの穏やかさはかなぐり捨てて。
「あの女と、お前とじゃ、住む世界が違うんだよ。あんな女にお前の何がわかる???俺の方がお前をわかってやれる。理解してる。」
燈真が畳み掛けるようにして俺に言い聞かせる。
「俺はこれからだって、お前に協力してやるよ。けど、あの女に関わるなら、お前は変わらなくちゃいけないだろ?でも変われるわけがない。お前の境遇は変えられない。な、考えなくても、どっちが正解か、わかるだろ?」
薄暗い部屋で。
いつか、差し出された契約。
あの時の自分は、他に何も持っていなくて。
世界にも嫌気が差してて。
放り出された履歴書、みたいに。
自分の居場所なんて、そんなものなんだって。
小さい頃、母親に空気のように扱われたみたいに。
どこに行ったって、自分の居場所なんか、ないんだって。
そう、思ってたし、信じてた。


